2026年2月28

春先になると、大人だけでなくお子さんも「目がかゆい」「鼻がムズムズする」と訴えることが多くなりました。最近の調査では、以前よりも低い年齢で花粉症を発症するケースが目立っています。
お子さんの花粉症は、大人のように「花粉がつらい」とはっきり言葉にできないことも多いため、周囲の大人がサインに気づいてあげることが大切です。今回は、最新のデータを交えながら、子どもの花粉症の特徴や治療法について詳しく解説します。
低年齢化が進む「子どもの花粉症」
「まだ小さいから花粉症ではないだろう」と思っていませんか?実は、子どもの花粉症の発症年齢は年々若まっています。
2019年の全国疫学調査によると、年齢別の有病率は以下の通りです。
- 0〜4歳: 3.8%
- 5〜9歳: 30.1%
- 10〜19歳: 49.5%
5歳を過ぎるとおよそ3人に1人が、10代では約半数が花粉症を抱えているという現状があります。乳幼児期から発症するケースも決して珍しくなくなっており、早期の対策が求められています。
見逃さないで!子ども特有の「サイン」と症状
子どもは自分の体調の変化を客観的に伝えるのが苦手です。くしゃみや鼻水といった分かりやすい症状だけでなく、以下のような「身体的なサイン」に注目してください。
目に現れるサイン(眼科的視点)
- 目を頻繁にこする・かく
- パチパチとまばたきを繰り返す
- 目の周りが赤く腫れている
- 涙目になっている、または目やにが増える
特にお子さんの場合、かゆみを我慢できずに強く目をこすってしまいがちです。これにより角膜(黒目)に傷がついたり、結膜炎が悪化したりすることがあるため注意が必要です。
鼻や顔に現れるサイン
- 鼻を上下にこするしぐさ
- 顔をしかめる癖
- 口呼吸(鼻づまりのため)
- 人中(鼻の下の溝)を伸ばすようなしぐさ
また、鼻水の性質をチェックすることも重要です。
- 透明でサラサラ: アレルギー(花粉症)の可能性が高い。
- 黄緑色で粘り気がある: 細菌感染の可能性が強くなります。風邪や副鼻腔炎の併発が疑われるため、慎重な判断が必要です。
子どもの花粉症、治療にはどんな選択肢がある?
花粉症の治療は、単に症状を抑えるだけでなく、お子さんの生活の質(QOL)を守るために行います。
① 局所的な処置
眼科では、目薬の処方とともに、必要に応じて目に入った花粉を洗い流す指導なども行います。鼻については、鼻吸引や鼻洗浄(鼻うがい)も有効です。
② 薬物療法
症状の重さに合わせて、以下のような薬剤を組み合わせて使用します。
- 抗アレルギー剤: 内服薬(飲み薬)や点眼薬(目薬)、点鼻薬。
- ステロイド薬: 症状が強い場合に、鼻噴霧用や点眼用として一時的に使用することがあります。
- 生物学的製剤(オマリズマブ): 12歳以上で重症の場合に適応される比較的新しい選択肢です。
※注意点として、点鼻用の血管収縮薬は2歳未満の乳幼児には使用できません。
③ アレルゲン免疫療法(根本治療の可能性)
これまでの薬物療法が「対症療法(症状を抑える)」であるのに対し、花粉症そのものを治すことを目指すのが免疫療法です。
- 皮下免疫療法: エキスを皮膚の下に注射します。
- 舌下免疫療法: スギ花粉のエキスを舌の下に入れて服用します。
これらは年齢制限はありませんが、5歳未満のお子さんの場合は副作用(アナフィラキシー等)への対応に精通した医師のもとで行うことが推奨されます。3〜5年という長期の治療期間が必要ですが、治療終了後も数年間にわたって効果が持続することが期待できる、唯一の「治癒」を目指せる方法です。
なぜ「完治」を目指すべきなのか?
花粉症は、放っておくと生活のあらゆる面に悪影響を及ぼします。
- 睡眠の質の低下: 鼻づまりや目のかゆみでぐっすり眠れない。
- 学習への影響: 集中力がなくなり、勉強や読書に支障が出る。
- 運動への影響: 外遊びやスポーツを全力で楽しめない。
花粉症は完治が難しい疾患ではありますが、適切な治療によって「日常生活に支障がない状態」を維持することは十分に可能です。お子さんが、遊びや勉強といった「子どもらしい当たり前の活動」を制限されることがないよう、早めに医師に相談し、最適な治療を見つけてあげることが重要です。
当院から親御さんへのアドバイス
「たかが花粉症」と思わず、お子さんの目が赤かったり、しきりに目を気にしていたりする場合は、ぜひ眼科を受診してください。眼科では、目のかゆみを抑える点眼薬の処方はもちろん、目をこすりすぎることによるトラブルも併せてチェックいたします。
また、日常生活では以下の対策を心がけてみてください。
- 帰宅時は玄関で服を払い、すぐに顔を洗う(目を洗う)
- 花粉の飛散が多い日はメガネやマスクを着用する
- 洗濯物はなるべく部屋干しにする
お子さんのキラキラした瞳を守るために、一緒に花粉シーズンを乗り切りましょう。
参考文献: 千葉県小児科医会 椿俊和 医師 資料「こどもの花粉症」より