2026年3月21

最近、学校検診の結果を持って来院されるお子さんが非常に増えています。文部科学省の調査でも、小中学生の裸眼視力は過去最低水準を更新し続けており、まさに「近視パンデミック」とも言える状況です。
かつて近視は「進んだらメガネをかければいい」という考え方が一般的でした。
しかし現在、眼科医療の世界では、近視は「単なる視力低下ではなく、将来の眼疾患リスクを遠ざけるために、今から抑制すべきもの」という認識に大きく変わっています。
今回は、2026年現在の最新トピックを交え、お子さんの目を守るために「今できること」を詳しく解説します。
なぜ近視を放っておいてはいけないのか?
近視の多くは、眼球が前後に伸びてしまう「眼軸(がんじく)の延長」によって起こります。一度伸びてしまった眼球の長さは、残念ながら現代の医学でも元に戻すことはできません。
眼球が引き伸ばされると、その奥にある網膜や視神経に大きな負担がかかります。将来的に、緑内障、網膜剥離、近視性黄斑症といった、失明につながりかねない重篤な病気を引き起こすリスクが高まるのです。だからこそ、「眼軸をこれ以上伸ばさないこと」が治療の最大の目標となります。
日本初の承認薬「リジュセアミニ」と保険適用の進展
現在、もっとも身近で始めやすい治療が、近視抑制の点眼薬です。
- リジュセアミニ(低濃度アトロピン点眼):2024年末に厚生労働省より日本で初めて「小児の近視進行抑制」を効能・効果として承認されたお薬です。1日1回、寝る前に点眼するだけで、眼軸が伸びるのを抑える効果(約30〜40%の抑制効果)が期待できます。
- 2026年の大きなニュース:これまでこの治療は、診察代から検査代まですべてが「完全自費」でした。
しかし、2026年6月からはリジュセアミニ処方に伴う診察や検査代について、公的医療保険の対象となる方針が示されました(※お薬代自体は引き続き自費ですが、ご家庭の負担は大きく軽減されます)。
これにより、治療のハードルがぐっと下がりました。
寝ている間に視力矯正「オルソケラトロジー」
日中、メガネやコンタクトなしで過ごしたい活発なお子さんに最適なのが「オルソケラトロジー」です。
- 仕組み: 特殊な形状のハードコンタクトレンズを寝る時だけ装着し、角膜の形を一時的に平坦化させます。
- メリット: 日中は裸眼で過ごせるため、スポーツや習い事に全力で取り組めます。また、近視抑制効果も複数の研究で証明されています。
- 最新の考え方: 最近では、前述の「リジュセア(点眼)」と「オルソケラトロジー」を併用するハイブリッド治療も普及しています。単独治療よりも高い抑制効果が得られるという報告もあり、当院でも推奨するケースが増えています。
次世代の光治療「レッドライト(RLRL)療法」
現在、眼科医の間でもっとも注目されているのが、レッドライト(Repeated Low-Level Red-Light)療法という最新機器による治療です。
- どんな治療?: 専用のデバイスから出る安全な赤色光を、1日3分×2回、覗き込むだけの治療です。
- 驚きの効果: 海外の臨床試験では、従来の点眼やオルソケラトロジーを上回る、非常に高い近視抑制効果(場合によっては眼軸長が短縮したという報告も)が示されています。
- 現状: 日本ではまだ未承認の医療機器(自費診療)として扱われることが多いですが、既存の治療で効果が不十分だったお子さんの「次の一手」として、導入するクリニックが増えています。

今すぐ、ご家庭でできる「目の守り方」
最新治療も大切ですが、土台となるのは日常の生活習慣です。今日から以下の2点だけは守ってください。
- 「20-20-20」のルール: 20分間近く(スマホや本)を見たら、20フィート(約6メートル)先を、20秒間眺める。
- 1日2時間の屋外活動: 太陽光に含まれる「バイオレットライト」などが近視抑制に効果的であることがわかっています。外で遊ぶ時間は、最強の近視予防薬です。
眼科医からのお願い
お子さんの近視治療には、適した「時期」があります。身体の成長が終わる中学〜高校生頃になると、治療の効果は限定的になってしまいます。
「まだ少し目が悪いだけだから」と先延ばしにせず、まずは一度、専門的な検査を受けてみませんか?
お子さんの10年後、20年後のクリアな視界を守るために、私たちは最新の知見をもってお手伝いをさせていただきます。
より詳しく知りたい方はお気軽にスタッフまたは医師までご相談ください。
注釈: 治療の適応や費用については、お子さんの眼の状態によって異なります。事前の精密検査が必要です。