2026年8月08

当院には、日々さまざまな目のトラブルで患者様が来院されます。その中でも特に多いのが、「うっかりコンタクトレンズをつけたまま寝てしまった」というご相談です。「少しの間だけなら……」「疲れていて、ついそのまま……」と、軽く考えてしまいがちですが、実はコンタクトレンズをつけたまま眠ることは、目に大変な負担をかける危険な行為です。
今回は、なぜコンタクトをつけたまま寝ることが目に悪いのか、そして万が一つけっぱなしで寝てしまった場合にはどう対処すべきかをわかりやすく解説します。
なぜ、コンタクトをつけたまま寝ると目に悪いのか?
私たちが起きているとき、黒目(角膜)はまばたきを通して外の空気に触れ、大気中から直接酸素を取り込んでいます。しかし、コンタクトレンズを黒目にのせている状態では、どうしても酸素の供給量が少なくなってしまいます。
さらに、目を閉じると状況は一変します。睡眠中はまぶたの裏側にある血管から酸素が供給されるため、起きているときに比べて、角膜が利用できる酸素の量は約3分の1から6分の1程度にまで激減します。この状態でコンタクトレンズをつけ続けると、目に以下のような深刻なトラブルを引き起こします。
① 角膜が「窒息状態」になる(酸素不足)
レンズがフタの役割をしてしまうため、睡眠中の角膜は極度の酸素不足(酸欠状態)に陥ります。角膜には血管が通っていないため、酸素が不足すると新陳代謝が滞り、透明な組織を維持できなくなります。
② 角膜の細胞が傷つき、剥がれやすくなる
酸素が足りなくなると、角膜の表面を守っている細胞(角膜上皮細胞)がダメージを受けて弱り、剥がれやすくなります。この状態のままレンズが張り付いていると、朝起きてレンズを外す際、角膜の表面を一緒に剥ぎ取ってしまう「角膜上皮障害」が起こりやすくなります。
③ 雑菌が繁殖しやすくなり、感染症の危険が跳ね上がる
睡眠中は、涙の量が減り、涙に含まれる抗菌成分(免疫機能)も低下します。さらに、レンズの下に雑菌や汚れが閉じ込められたままになると、湿気と温度が揃った密閉空間で細菌やアカントアメーバなどが爆発的に繁殖します。これにより、失明の危険もある「細菌性角膜炎」や「角膜潰瘍」といった重篤な眼感染症を引き起こすリスクが何倍にも跳ね上がります。
④ 血管が黒目に侵入する(角膜の血管新生)
慢性的な酸素不足が続くと、身体は「なんとか酸素を届けよう」として、本来は血管のない黒目の黒い部分に向かって白目から新しい血管を伸ばしてきます。これを「角膜血管新生」と呼びます。一度侵入した血管は完全に消えることは難しく、視力低下や見え方の質の低下につながります。

「これくらい大丈夫?」危険なサインとは
「たまにうっかり寝てしまうくらいなら大丈夫だろう」と思っていませんか?朝起きたときに以下のような症状がある場合は、すでに目に大きな負担がかかっているサインです。
- 目が赤く充血している
- ゴロゴロとした異物感や、チクチクした痛みがある
- まぶしく感じる、または涙が止まらない
- 目を開けにくい、かすんで見える
これらの症状が出ているときは、角膜が傷ついている可能性が高いので、直ちに専門医の診察を受ける必要があります。
うっかりコンタクトをつけたまま寝てしまったときの正しい対処法
「やってしまった!」と気づいた朝、慌てて無理やりレンズを外そうとするのは非常に危険です。酸素不足で乾燥したレンズが角膜にピタリと張り付いているため、力任せに外すと角膜の表面が大きく削れてしまいます。
以下の手順に沿って、落ち着いて慎重に対処してください。
ステップ①:絶対に無理やり外さない
まずは深呼吸をして、乾いた状態のまま指でレンズを引っ張って外そうとしないでください。角膜を傷つけて激痛や出血を伴う原因になります。
ステップ②:人工涙液や保存液で潤いを与える
防腐剤の入っていない人工涙液(またはソフト・ハード用の目薬、レンズ保存液)を数滴、点眼します。レンズが十分に水分を含み、黒目の上で「ツルツル」と動くようになるまで待ちます。
- ※水道水はアカントアメーバなどの感染リスクがあるため、絶対に直接使用しないでください。
ステップ③:レンズが動くことを確認して、そっと外す
目薬が馴染んで、レンズが黒目の上で軽く動く(スライドする)ようになったことを確認してから、いつも通り優しくレンズを外します。なかなか動かない場合は、無理をせず再度点眼して少し待ちましょう。
ステップ④:本日は「メガネ」で過ごす
レンズを外した後の角膜は、非常にデリケートで傷ついた状態になっています。その日のうちはコンタクトレンズの装着を一切やめ、メガネで過ごして目を休ませてください。
ステップ⑤:眼科を受診する
痛みが引いたように感じても、目に見えない微細な傷がついていることがあります。「充血が引かない」「痛みが続く」「ゴロゴロする」といった症状が少しでもある場合は、必ず当院をはじめとするお近くの眼科を受診してください。適切な点眼薬(抗菌目薬や角膜修復を助ける目薬など)の処方を受けることが、悪化を防ぐ一番の近道です。

まとめ
コンタクトレンズは、正しく使えば非常に便利で快適な視力矯正ツールです。しかし、使い方を誤ると、大切な目の健康を脅かす諸刃の剣にもなり得ます。
「疲れて帰ってきたから、そのまま寝てしまいたい」という気持ちは痛いほどよく分かりますが、目の健康を守るために、「寝る前には必ずコンタクトを外す」という基本の習慣を徹底しましょう。
万が一、つけて寝てしまって目に違和感を覚えたときは、自己判断で放置せず、お早めにめめ眼科船橋までご相談ください。皆様のクリアで健やかな視生活を、スタッフ一同しっかりとサポートいたします。
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